【プロローグ第1回】

家の前にいたのは、見知らぬ男だった。

スーツをきっちりと着込み、気難しそうな顔で手に持った書類を捲っている。

オレに気づくと、動かしていた手を止めて顔を上げた。険しかった表情が穏やかに緩む。

【???】
「久しぶりだな、幹くん」

……誰だっけ??

オレのこと知ってるみたいだけど、オレはこの人のこと、知らない。

【???】
「従兄弟の辰川雅英だ。……君は、憶えていないかもしれないな」

そう言って、妙に寂しげに微笑む。

なんだか胸が騒ぐ。

どうしてだろう。

【辰川】
「少し歩こう」

やんわりと促され、オレは辰川さんと並んで歩き出した。

冬の匂いを纏う秋風は冷たい。
【辰川】
「君に、大事な話があって来た。聞いてくれるか?」

【幹】
「大事な話? オレに?」

【辰川】
「君にはつらい話になるだろうが、受け止めて欲しい」

つらい話?

全然想像がつかない。

【辰川】
「君のおばあさんが亡くなった。葬儀も済んでしまってからの報告になってしまって、すまない」

【幹】
「………え……?」

思わず立ち止まる。

今、なんて言った?

おばあさん?

おばあさんて、ばーちゃん? オレの?

ばーちゃんが亡くなった……?

葬儀も終わってるって……?
おぼろげな遠い昔の記憶の中の、ばーちゃん。

ばーちゃんはいつも優しかった。

お母さんの帰りが遅くて、オレが拗ねて駄々をこねても、いつも優しく慰めてくれて……。

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