家の前にいたのは、見知らぬ男だった。
スーツをきっちりと着込み、気難しそうな顔で手に持った書類を捲っている。
オレに気づくと、動かしていた手を止めて顔を上げた。険しかった表情が穏やかに緩む。
【???】
「久しぶりだな、幹くん」
……誰だっけ??
オレのこと知ってるみたいだけど、オレはこの人のこと、知らない。
【???】
「従兄弟の辰川雅英だ。……君は、憶えていないかもしれないな」
そう言って、妙に寂しげに微笑む。
なんだか胸が騒ぐ。
どうしてだろう。
【辰川】
「少し歩こう」
やんわりと促され、オレは辰川さんと並んで歩き出した。
冬の匂いを纏う秋風は冷たい。
【辰川】
「君に、大事な話があって来た。聞いてくれるか?」
【幹】
「大事な話? オレに?」
【辰川】
「君にはつらい話になるだろうが、受け止めて欲しい」
つらい話?
全然想像がつかない。
【辰川】
「君のおばあさんが亡くなった。葬儀も済んでしまってからの報告になってしまって、すまない」
【幹】
「………え……?」
思わず立ち止まる。
今、なんて言った?
おばあさん?
おばあさんて、ばーちゃん? オレの?
ばーちゃんが亡くなった……?
葬儀も終わってるって……?
おぼろげな遠い昔の記憶の中の、ばーちゃん。
ばーちゃんはいつも優しかった。
お母さんの帰りが遅くて、オレが拗ねて駄々をこねても、いつも優しく慰めてくれて……。