【プロローグ第5回】

【スオウ】
「驚かせてしまったようで申し訳ありません。ところで貴方は? こちらにお住まいの方ですか?」

【幹】
「あ、オレはここの管理人なんだ。全然らしくないだろうけど本当だよ」

【スオウ】
「管理人さん? 貴方の……お名前をお伺いしても、よろしいですか?」

【幹】
「樋口幹だけど?」

オレの名前なんか聞いて、どうするんだろう。

ここへ来るのが初めてじゃないってことは、やっぱり住人の知り合いなのか?

【スオウ】
「では……幹君は、ハナさんのお孫さんですね」

【幹】
「ばーちゃんや、オレのこと知ってるの?」

【スオウ】
「私が以前この近くにおりました際、ハナさんには懇意にしていただきました。その時に幹君のことも少し……」

【スオウ】
「事情があって離れて暮らしておいでとお聞きしてましたが、移ってらしたのですね。ハナさんもそれを望まれていましたから、喜ばしいことです」

樋口ハナっていうのが、ばーちゃんの名前だ。

住人じゃなくて、ばーちゃんの名前が出て来たことに驚かずにいられない。

ここへ来てまだ日が浅いけど、ばーちゃんの知り合いが訪ねてきたことなんて無かった。

初めて訪ねて来たのが占い師って……。

ばーちゃん、不思議な人と知り合いだったんだな……。

【幹】
「ばーちゃん、オレと一緒に暮らしたがっていたの?」

【スオウ】
「はい。出来れば幹君にこの下宿を継いでもらいたいと、そうおっしゃってましたよ」

スオウさんが微笑みながら告げてくる。

ばーちゃんの望みを、こんな形で聞くことになるとは思っていなかった。

【スオウ】
「ハナさんがお元気であればと思い、こちらへ立ち寄らせていただきましたが……。お孫さんに会えるとは思いませんでした」

【幹】
「あの……ばーちゃんは、その……」

【スオウ】
「ハナさん、お亡くなりになられたようですね。私も先ほど知って驚きました」

スオウさんが悲しげに眼を伏せた。でも……ばーちゃんが死んじゃったこと、どうしてわかったんだろう。

ここへ来て初めて知ったみたいだけど……?

【幹】
「そう……ばーちゃん、死んじゃってさ。だからオレが代わりに管理人をしてるんだ」

【スオウ】
「大変ですね。こんな広い庭をお一人で手入れされて」

【幹】
「今までさぼってたからね」

【スオウ】
「でも、ご自分の意志で始められたのでしょう? 綺麗にしていただいて桜も喜んでいますよ」

【スオウ】
「あまり花をつけることもない老木ですが、切り倒したりしないで欲しい。……そう懇願しています」

【幹】
「切り倒すなんて、そんなことしないよ!」

【スオウ】
「そうですか。幹君にそう言っていただけて私も安心しました。いつまでも大切にしてあげて下さい」

スオウさんの口ぶりだと、まるで桜の樹と会話でもしたみたいだ。占い師って、そういうことも出来るのかな?

出来ちゃったら……ますます怪しいよ……。

【スオウ】
「少し迷いましたが、こちらに来て良かった。幹君にも会えましたしね」

【幹】
「オレは、ちょっとビックリしたけどね」

【スオウ】
「驚かせたお詫びに、幹君の運勢を占わせていただけませんか? 占いがお嫌いなら、無理にとは申しませんが」

占いを信じてるわけじゃない。でも、ちょっと興味がわいてきた。

どんな結果でも、良いことだけ信じればいいんだ。

占いもだけど、スオウさんに興味がある。占い師なんて職業の人に会ったの初めてだもんね。

【スオウ】
「では、今日の運勢を占いましょう」


<つづきは製品でお楽しみください>

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