【プロローグ第4回】


階段を上りきると、足元の床がぎしっと軋んだ。

歩くたびぎしぎし言ってる……。

二階には、廊下を挟んで部屋がいくつか並んでいる。

どこの部屋かなーってきょろきょろしてたら、目の前でドアが開くのが見えた。

そこから、背が高くてがっしりとした体躯の青年が出てくる。

しかも、すごい派手な金髪……。

――もしかして、あれがレイ??

部屋を出たばかりの彼は、オレに気づくと軽く目を瞬いて、

ゆっくりと近づきながらオレの顔をじーっと凝視し始めた。

【???】
「君は誰? どうしてここにいるの?」

うっわーー、なんだこの、極上の甘い甘い笑顔は。

しかも外国人だし……。

褐色の肌で、碧色の瞳で……すごく整った顔立ちだ。

妙に恥ずかしくなって、オレは赤くなってしまった。

しかも、顔を近づけて覗き込んでくるし。

【幹】
「か、管理人になる樋口幹です!」

【???】
「ヒグチ……ヒグチ……ムトキ?」

【幹】
「モトキ、ですよ。ヒ・ク・゙・チ・モ・ト・キ!」

【???】
「……うーん、言いにくいなぁ」

モトキって、外国の人には、発音しにくい言葉なのかな?

オレにはよくわからないけど……。

けど日本語めちゃくちゃ流暢で上手いなぁ。

【???】
「ああ、僕も自己紹介しないと。僕はレイモンド・リー・バラクリシュナン。レイでいいデス。どうぞよろしく、管理人さん」

この人がレイ、か。

まさか外国人だったとはな。

【レイ】
「そうだ、名前を漢字で教えてくれない? 僕、とっても日本語に興味があるんだよ」

【幹】
「漢字で? いいよ」

レイは丁寧にも自分のポケットからメモ帳とペンを取り出して、差し出してくれた。

その顔は嬉しそうに輝いている。

【レイ】
「アリガトウ」

【レイ】
「あー、こう書くんだね。これは木の幹だから……。ミキくんって呼んでもいいデスカ?」

ミキくん……。

【レイ】
「嫌デスカ?」

【幹】
「いや、別にいいよ。ただちょっと、女の子みたいだけど」

【レイ】
「アリガトウ。『モ』の発音は苦手なんデス……」

苦手ならしょうがないよな。

愛称みたいなもんだと思って、理解しよう。

【レイ】
「僕の他に、誰かと会いました?」

【幹】
「うん。松丘さんとマドカに」

【レイ】
「じゃあ僕で最後だね。ミキくんが増えて賑やかになるよ。嬉しいなぁ」

むしろこれから減っていって静かになる予定なんだけど……、言い出しにくかった。

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