【プロローグ第2回】

【???】
「誰だよ」

【幹】
「わっ!」

び、びっくりしたーー。

台所から包丁を持ったまま現れたのは、オレと大して年も変わらなそうな青年だった。

……雰囲気は、ちょっと、いやかなり、怖そーだ。

髪型とか服装は普通なんだけど、どうしてこんなに怖いんだ?!

近寄りがたいっていうか、こういうタイプの前だとどうしても緊張してしまう。

せめて、睨むのやめてくれないかな……。

それと包丁! 似合いすぎて、怖い……。

【???】
「ここに何か用か?」

鋭い目がじろじろとオレを検分するみたいに眺め回す。

観察されてるような気がして、思わず背筋を正してしまった。

【幹】
「……さっき、玄関でこんにちはーって言ったんだけど……」

【???】
「聞こえなかった」

あんなに大声出したのに、聞こえないわけないだろ!!!

玄関からここまで、そんなに距離もないのに。

きっと応対するのが面倒だったんだろうな。

【幹】
「聞こえてたくせに!! オレ、大声出したんだぞ!」

【???】
「やたら威勢がいいな、お前。で、お前は何者なんだ?」

【幹】
「オレは今日から管理人になる樋口。あんたは?」

【???】
「松丘晃。お前に管理される住人だ」

松丘さん、か。

正直、出て行ってくれって言って、あっさり頷いてくれるようなタイプには見えないな……。

【幹】
「他の住人は?」

【コウ】
「今日は全員いるぜ。部屋にいるんじゃねぇの?」

ああ、いるんだ。

願わくば、他の住人は追い出しやすそうだといいんだけど。

【幹】
「そっか。松丘さんは食事の支度中だった?」

【コウ】
「ああ。昼飯食い遅れたからな」

自炊なんてしなさそうなタイプに見えるのに、なんか包丁の扱いには慣れてそうだ。

ここじゃみんな自炊してるんだろうか?

下宿の仕組みが、オレにはサッパリわからないや。

他の住人がどんな感じなのか見に行ってみようかな。

【幹】
「住人って、全部で何人いるんですか?」

【コウ】
「俺含めて三人。あとの二人はレイとマドカって奴だ」

レイと、マドカ。

………女の子?!

オ、オレ聞いてないぞ。

女の子と同居なんてそんな……。

そこまで考えてなかった。

名前から想像できるのは可愛い女の子だし。

【コウ】
「ちなみに両方男だからな。ビビったのが顔に出てるぜ。わかりやすいな、お前。引っかかるかなと思ってわざと下の名前を出したら、案の定だったな」

松丘さんは面白がる目つきでオレを眺めている。

完璧にからかわれてる。

く、悔しい。

【幹】
「………それじゃあオレは他の人に挨拶してくるから! お邪魔しました!」

くっそーー。

あっさり引っ掛けられちゃった自分が恥ずかしい。

さっさと他の人に挨拶しとこうっと。

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