「先生ってさ・・・時々危険なほど無防備だよね・・・」
ハッと我に返ると、三隅の顔がシャレにならないほど接近していた。
「いくら天然にしてもちょっと・・・あ、もしかしてそれって作戦?『そんなところが可愛いな』とか『守ってあげたいな』とか思わせちゃうっていう…だとしたら」
彼は不意に目をそらせて、顔を赤くする。
何だかとってもナイーブで、いかにも傷つきやすそうな十代そのものの表情。
「完敗だよ、僕は。ものの見事に引っかかって、
先生を『奴等』から守ってあげたいって気持ちにさせられちゃってるんだから…」
・・・だから奴らって誰なんだよ。
『組織』『敵』『奴等』…映画とか漫画のなかみたいな
こういう意味ありげな言葉が大好きらしく、三隅の話のなかにはいっぱい出てくる。
けどいちいち突っ込んだところで、説明するまでもないような当たり前のことを・・・
例えばフツーの人に「電話って何ですか?」って質問をした時みたいに扱われてしまうことを、
俺はこの一ヶ月ちょいで痛いほど思い知っていた。